経済の仕組みってわかっているようで実はなんだかよくわかりません。投資家にとって経済の仕組みを理解することはお金の流れを理解することにつながります。お金の流れが理解できると、どこに投資をすれば良いのかも見えてくるでしょう。
経済の仕組みを学びたいというあなたには、以下の動画がとてもおすすめです(約31分)!この動画はヘッジファンド界の帝王とも呼ばれている伝説の投資家、レイ・ダリオ氏が作成したものです。
経済をこんなにわかりやすくした動画は他にないと思います。
経済は取引と市場の積み重ね

ダリオ市は経済活動をまとめると以下の要素が大切だと語ります。
- 経済はシンプルな取引の積み重ねである。
- 人、会社、政府機関の信用による借金が経済を拡大させる。
- ただし、信用による支出が拡大し過ぎるとバブルが発生し、金融危機を招く。
あなたの支出は他のだれかの所得につながります。たとえば、私たちは住宅ローンで借り入れを行ったり、自動車を購入するために借金をすることで現在の暮らしをより豊かにすることができます。将来の自分から借り入れを行うことで現在の資金を増やすことができるのです。
その結果、住宅メーカーや自動車メーカーが儲かります。あなたの支出は誰かの収入になり、誰かの支出が増えることでどんどん景気が良くなっていきます。借金によって現在のお金の量が増えるので、金回りが良くなってみんなの所得が増えていくのです。これがバブルです。
しかし、借金はいずれ返さなければなりません。借金を返すためには出費を抑える必要があります。あなたの支出が減ると誰かの収入が減ります。すると市場に回るお金も少なくなって景気が停滞するのです。
経済変動には短期の波と長期の波がある
このように市場には短期的な景気の波がありますが、それでも長期的にみると富は増え続けていきます。なぜなら、人は借金を返済するよりも支出を増やす傾向があるからです。短期的な不景気は中央銀行が金利を下げることでカバーできるからです。借金が簡単になると人は借金をするようになって景気が良くなっていくのです。
そのために長期的にみると借金はどんどん膨らみ続けます。すると借金の返済額が収入よりも速いスピードでふえるときが来ます。こうなると中央銀行が金利を下げても景気は回復しません。金利が0%になってこれ以上下げられなくなっても、所得より返済額が大きいので銀行もお金を貸したがりません。
お金を借りることが難しくなると、支出はさらに抑えられます。あなたの支出は誰かの所得につながりますので、所得水準は落ちていきます。それでも債務の返済は依然として続きますから支出はさらに減少します。その結果、あちこちで借金が返せなくなって大恐慌が起こるのです。

経済変動の波はぶり返し起こります。これが長期債務周期の頂点となります。アメリカ、ヨーロッパ、その他の地域では、これが2008年に起こりました。同じ理由で日本では1989年に起こり、アメリカでは1929年にも起こりました。債務負担が支えきれなくなったのです。こうなると借金によるレバレッジが勢いをなくします。そうなると支出が減りだします。
長期債務周期は不景気と似ているようですが違います。利子を下げても景気回復に結びつきません。不景気なら利子を下げれば借りる金額がふえます。でもレバレッジが消滅していますから利子を下げようとしても既に利子は低くなっており、ときには0%になってしまいます。すると景気回復は不可能です。
大恐慌時に取れる景気対策は?
このような時に取れる対策は4つあります。
- 人、ビジネス、政府が支出を縮小する。
- 債務は不履行となりまた再編される。
- 資産は富裕層からそれ以外に再分配される。
- 中央銀行が新しい紙幣を印刷する。
この4つはレバレッジが消滅した際に実際に起こっています。また、今後もこれらの対策が取られるでしょう。

まずは支出が縮小されます。人、ビジネス、政府が財布のひもを締め、支出を縮小し債務を返済しようとします。
次に借金が返せなくなります。債務が破棄される不履行が起こります。貸し手は資産の消滅を避けるため債務の再編に同意します。返済額を縮小したり、返済期間を延長したり、最初に決めた利子を引き下げたりします。
そして、政府は富裕層からお金を集めようとします。資産は限られた少数の人たちが持っています。政府はこの富裕層からの税収入をふやすのです。すると富の再分配が起こります。
最後に中央銀行は何もないところから新しい紙幣を印刷し、資産を買い、政府債権を買うのです。特にお金を印刷するのは簡単ですから悪用されやすく、国民も印刷を希望することが多いです。大切なことは1920年代にドイツで起こったように、お金を大量に印刷してハイパーインフレを引き起こさないことです。
政府は4つの方法のバランスを保ち債務を減少させることが大切です。デフレ要素とインフレ要素のバランスを保つことが経済の安定につながります。
政府がバランスを維持できれば問題は悪化しません。成長率は低くても債務は減少します。レバレッジが減少していてもこれは可能です。所得がふえると借り手の信用が向上します。そうなると貸し手はお金を貸すようになり債務負担は減少しだします。
お金を借りることが可能になれば支出もふえ、経済は成長へと向かいます。これは長期債務周期で言うとデフレーションの段階です。レバレッジの減少は対応を間違えれば大問題となりますが、正しく対応すると問題解決を引き起こせるのです。
債務負担が減少し経済活動が正常に戻るまでには10年以上かかります。したがって失われた10年と呼ばれます。
経済の仕組みを日々の暮らしに活かすために
ではこのような経済の波を理解したうえで日々の暮らしはどうすれば良いのでしょうか?シンプルな答えは3つあります。
- 所得より早く借金を増やさない。でないと債務負担に耐えきれなくなります。
- 所得を生産性より早く増加させない。そうなると競争力が弱くなります。
- 生産性を向上させる努力を惜しまない。これが長期的に一番大切な要素です。
特に個人の能力を高め、生産性を向上させる努力を惜しまないというところが大切ですね。生産性が高い人はどの時代でも貴重です。
日本経済の現状はすでに・・・

経済の仕組みをまとめてみると理解しているようで今いちしっかりと説明できない自分がいますね。これは生活に落とし込んで簡単に説明できるようになるまで考え続けたいと思います。
この動画は何回も見ることがおすすめです。現在社会が経済の波のどの位置にいるのかを確認することは将来を理解する助けにもなります。
さて、ここで動画を最後まで見た方は、気が付いたのではないでしょうか・・・。現在の日本(2018年)の状況は大恐慌の一歩手前にも見えます。
1000兆円を超える政府債務はもはや返せない領域に入りつつあります。所得が50兆円の国家の支出が100兆円では借金は膨らむ一方です。それでも国債をバンバン発行し続けていますが、このような状態がいつまでも続くのでしょうか?
そして、政府は資産を持った富裕層から税金を取るための仕組みを強化しています。国民の財産を把握するためのマイナンバー制度ができました。海外資産を保有する人は所轄の税務署に対して「国外財産調書」の提出が義務付けられるようになりました。今では海外に資産を移すための銀行口座を作ることも難しくなっています。
最後に日銀は異次元金融緩和で日本円を大量に刷り続けています。それでも景気は良くならず回復する兆しをみせません。(株価は日銀による日本株購入で高くなりましたが、実体経済を反映していません。そのため、国民所得もあがりません。)
私はこのまま日本政府が財政健全化に向かえず日銀の金融緩和が失敗に終わると、将来かなりの金融危機が起こると思えてなりません。
財政破綻が確実に起こるとは考えていませんが、貯金封鎖や悪性インフレは戦後の日本で実際に起こりました。現在の日本の財務状況は戦後よりも悪いため、財政破綻が起こらないとは言えない状況です。
日本の財政破綻論には様々な意見がありますが、今後は日本財政破綻の可能性も考えたリスクヘッジが必要となるのではないかと思っています。