日本財政

ハイパーインフレの恐怖!日本で起こる可能性と対策

近年、ベネズエラやアルゼンチンなどの新興国でハイパーインフレが起きています。日本も戦後にハイパーインフレを経験しました。現在の日本と戦後の日本では状況が全く異なるので、今すぐ日本がハイパーインフレになるとは考えられませんが、その可能性がないともいえない状況です

ハイパーインフレが起こると私たちの現金資産はほとんど消失してしまいます。戦後のハイパーインフレを経験した世代は、資産の90%を失い、食べるものにも困るありさまだったと言います。

先進国となった現在の日本では以前のような急激なハイパーインフレは起こりません。それでも急激なインフレによって個人資産が大きく減るだけのダメージはあります。ハイパーインフレの可能性があるというのであれば、対策を考えておくことで自分を守る行動をとることができます。

さらにハイパーインフレで対策を行った人々の中には、資産を保護して価値が下がった土地を買い占めて資産家となった人もいます。ハイパーインフレについて知ることは資産防衛だけでなく、資産を増やしていくチャンスにもなり得るのですね

ハイパーインフレとは?

インフレ(インフレーション)とはお金の価値が下がり、物の価値が上がることです。なぜ物価が上がるかと言えば、物を欲しい人(需要)が物を売る人(供給)よりも多いからです。

たとえば、日本は高度経済成長期にみんなが車やテレビ、クーラーなどを欲しい欲しいという気持ちから物価が上がりました。欲しい人が多ければ多いほど、物価は上がるからです。その結果、車やテレビの製造者は給料が上がり、豊かになることでさらに多くの物を欲しがるようになりました。このように物価が上がる循環をインフレスパイラルと言います。

一方で日本は2000年代から深刻なデフレに悩まされました。デフレ(デフレーション)とはお金の価値が上がって、物の価値が下がることです。物を欲しい人(需要)が物を売る人(供給)よりも少ない状態のことです。

たとえば、パソコンなどは今年10万円の機種が来年になると5万円になったりします。すると私たちは安くなるまで物を買うのを控えます。そして、パソコン販売業社は物価を下げざるを得なくなります。その結果、パソコン製造者の給料は下がってさらに物を買わなくなるのです。このように物の値段が下がる循環をデフレスパイラルと言います。

詳しく知りたい方は以下の動画(6分20秒)を参考にどうぞ。


ですからインフレもデフレも実は需要と供給のバランスであり、私たち消費者の心理が現れた結果なのです。

ではインフレとデフレではどちらが良いのでしょうか?一般的にはインフレの方が良いと言われています。インフレとは経済が膨張しているときであり、デフレとは経済が縮小しているときだからです。だから、日本政府は年率2%のインフレ目標を掲げているのですね。

しかし、インフレも行き過ぎてしまうと私たちの生活に悪影響を与えてしまいます。それがハイパーインフレです。ハイパーインフレとは国際会計基準の定める3年間で累積100%(年率約26%)の物価上昇を見せます。

ただし、ハイパーインフレは具体的なインフレーション率の値によるのではなく、単に「猛烈な勢いで進行するインフレーション」のイメージを強調する際に用いることも多いです。私自身も3年で100%のインフレといよりも私たちの生活に深刻なダメージを与える悪性のインフレをハイパーインフレと捉えています。

ハイパーインフレになるとどうなるの?

ハイパーインフレになるとお金の価値が著しく下がってしまいます。100円で変えていたトイレットペーパーが翌年には1,000円になってしまうのです。つまり、1,000万円の貯金は1年で100万円の価値しかなくなってしまいます。物の値段が上がることでお金の価値が落ちてしまうのです。

こうなると貯金がある資産家から海外へ資産を移します。すると円の価値は暴落してさらにインフレと円安の悪循環にはまります。もちろんハイパーインフレが起こると政府は資産家の海外逃避を抑えるために、貯金封鎖や資産税を課してきます。ですから、ハイパーインフレが起こってから対策を打つことは困難です。

ハイパーインフレが起こって最も困るのは年金生活を送っているお年寄りです。年金の額は一定なのに、物価がどんどん上昇していくからです。ハイパーインフレを経験した国では年金受給者や生活保護者など社会的弱者の生活が困窮していきました

一方でハイパーインフレになると助かる人もいます。それは借金が多い人です。お金の価値が下がるということは1,000万円の借金も100万円程度の価値になってしまうということです

これはつまり、日本政府が本当に借金を返そうと思ったときに最も効率の良い方法でもあります。日本政府がインフレ率を高めたい理由の一つとしては、借金を少しでも目減りさせたいという気持ちがあるのです。

ハイパーインフレとは良くも悪くも資産のリセットです。お金の価値が下がるのですから、資産も負債もなくなるのです。それでも私たちの生活に与える影響は大きく、海外旅行に行けなくなり、生活必需品や食料品は価格の高騰で生活すらままならなくなります。

ハイパーインフレの原因は?

ではハイパーインフレはどのように起こるのでしょうか?主に2つの起こり方があります。

  • 紙幣の刷り過ぎ
  • 物資の不足

紙幣の刷り過ぎ

経済学においてはお金の発行量(正確には供給量)を増やすと、物価が上がると言われています。理由は簡単でお金の供給量を増やすと、お金の価値が下がってしまうからです。市場にたくさん出回っているものは一般的に価値(価格)が低くなります。

それはお金であっても同様で、市場にお金がたくさんでまわるようになると、お金の価値自体が下がってしまうのです。

お金の価値が下がるということは、1円あたりの価値が下がるということです。以前は100円で買えたものが、120円出さなければ買えなくなってしまうわけです。これはまさにインフレ、物価上昇です。

そして、かつてお金を刷り続けることで成功した文明は一つもありません。お金を刷ると一時的には景気が良くなりますが、最終的にはお金の信用力が低下して極度のインフレにつながってしまうからです。

そのため、多くの国では政府の影響下から独立した中央銀行に通貨供給量の決定権が与えられています。完全に独立しているというわけではありませんが、通貨供給量を増やしたい政府と、それを抑制したい中央銀行の対立はどこの国でも発生しています。

物資の不足

また、物資が不足することでもインフレが起こります。日本では、1973年(昭和48年)では原油価格の大幅急騰によってインフレが加速し、“狂乱物価” とまで言われました。物価上昇を先読みした業者が製品の販売を抑えたため、市場や店頭から商品がなくなって、洗剤やトイレットペーパーを買い占める騒ぎまで起こったのです。

資源のない日本は石油や食料品も海外からの輸入に頼っています。もし、石油産出国が石油価格を吊り上げたり、海外からの食品価格が高騰すると日本国内の物資は不足し、インフレへとつながることもあるのです。

ハイパーインフレは日本でも起こる?

実際に、ハイパーインフレが起こるのは、敗戦や革命といった時期であることが多いです。そのため、日本がすぐさまハイパーインフレを起こるとは考えにくいです

今まで大規模なハイパーインフレを起こしたドイツ、ロシア、アルゼンチン、フランスなどは敗戦がきっかとなったからです。敗戦国は敗戦により多額の賠償が発生するため、政府は通貨を大量に発行します。さらに自国の生産業は壊滅的な打撃を受けているため、物資も不足します。通貨の大量発行と物資不足によってハイパーインフレが加速するのです。

このようなことを考えると生産力が高い日本ですぐさまハイパーインフレが起こる可能性は低いでしょう。

一方で、日本のハイパーインフレについて危険性を訴える著名人も多くいます。経済学者で慶應義塾大学教授の小林慶一郎氏や経営コンサルタントの大前研一氏はハイパーインフレの危険性を伝えています。

ではなぜ多くの著名人がハイパーインフレの危険性を伝えているのでしょうか?元モルガン銀行東京支店長でジョージ・ソロスのアドバイザーを務めた伝説のトレーダー藤巻健史氏は以下のように発言しています。

お金を秩序なく刷りまくっていたら、円の価値が下がり、インフレが止まらなくなります。そして円に対する信用は失われ、さらに円の信用が失われるような事件が起きれば、年率数万%も物価が上がるハイパーインフレへと転落していってしまうでしょう。すると、事態を収拾するために『第二日銀』が誕生し、新しい第二日銀券を発行して、紙くずと化した従来の日銀券と交換することが始まります。元の日銀は実質的に倒産に追い込まれるわけです。

さすがにここまでハイパーインフレが加速するとは思いませんが、日本でハイパーインフレが起こる可能性はあるのです。

円の価値が暴落するとハイパーインフレは起こる

ではどのように日本でハイパーインフレが起こるとしたら何がきっかけで起こるのでしょうか?それは日銀が国債を買い支えられなくなり、円の価値が暴落するときです

日銀は現在、異次元金融緩和によって日本円を大量に刷り続けています。刷り続けたお金で国債を買い支え、金利の暴騰を抑えているのです。それは、もし日銀の国債買い支えがなくなると長期金利が暴騰し、政府の国債利払いが急騰して財政危機に陥るからです。詳しくは以下の記事を参考にどうぞ。

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現在(2018年)日銀は年間80兆円をめどに国債の買い入れを実行しています。しかし、このような状態がいつまでも続くはずがありません。このままの調子で日銀が国債を購入し続ければ、2021年にはほとんどの国債を日銀が買い占めてしまい、日銀は買い支えができなくなると言われています。

日本の国債がこれまで安泰と受け止められてきたのは、そのほとんどを日本人が購入しているからです。自国の国債が暴落しては自分たちが困りますから、売りに走ったりはしないと考えるのが普通です。

しかし実際に国債を買っているのはすでに日銀がほとんどです。政府の借金を補填するために政府の子会社である日銀がお金を刷って、国債を買い支えるという行為は財政ファイナンスと言って国際的に禁じ手となっています。それは政府が通貨を発行してしまうと財政規律が崩れて通貨の信用が落ちてしまうからです。

今はまだ国際的に円の信用は落ちていません。しかし、政府の借金のほとんどを国の中央銀行が持っているような国はどこにもありません。もしそんなことになったら、日本円の信頼性は大きく低下し、日本円の暴落は免れません。日本円が暴落するということは海外から輸入している資源や食料品の価格は高騰し、結局はインフレにつながっていきます。

さらに、一旦インフレが加速すると金融緩和を行っている日本には、金利を上げてインフレを終息させるという金融政策が使えません。金利を上げると財政危機に陥るからです。

さらに、日本が伝統的金融政策をとっていれば急激なインフレがもし起こったとしても防止することは可能でした。金利を下げることでインフレを抑えることができたのです。しかし、現在の日本は異次元金融緩和政策をとっていることでその予防壁が実質的に消失しています。一度インフレがはじまると止めることができないのです

日本ではかつてハイパーインフレが起こった

実は日本の歴史を振り返ると戦前は敗戦直後に太平洋戦争の軍備のために発行した戦時国債は戦後ハイパーインフレにより紙切れ同然になりましたし、銀行は預金封鎖をおこなっています。

日本でハイパーインフレが起こったのは、ほんの70~80年前の話です。今は当たり前の日本の銀行や国債の安全神話も実はたった40~50年のものです。さらに日本政府とメディアは日本の安全性をこれでもかと言うほどに発信します。実は海外メディアの方が日本の財政事情については厳しい見方をしています。

戦後の日本と今の日本では生産力や資産も異なりますが、借金は戦前よりも大きいのです。日本人は国民性として右ならえの意識が強く、一度危機感を感じると一斉に動きます。円の価値や国債についても一度大きく動くと歯止めが効かなくなる可能性もあります。

刷った日本円を日本国民を含めて世界中の人が信じられなくなればその通貨に固着できません。新しい中央銀行と新しい紙幣が必要になります。例えば戦後ドイツの中央銀行は賠償金支払いのための、異次元緩和のせいでマルク紙幣をいくらでも刷れるのにも関わらずつぶれました。そして新しいブンデスバンクとブンデスマルクが生まれました。

世界で起きたハイパーインフレの事例

ハイパーインフレは世界各国で起こっており、日本だけそれが起こらないということはありません。では世界で起きたハイパーインフレの例を紹介します。

ドイツ

第一次世界大戦に敗戦したドイツはとてつもないハイパーインフレに襲われました。戦争による経済の疲弊だけでなく、「ドイツ封鎖」もハイパーインフレの大きな要因となったのです。

ドイツ封鎖とは「ドイツやオーストリア、トルコなどに対して、原材料や食料の供給を断つために、戦艦などで海上を封鎖する作戦」のことです。第一次世界大戦に勝利したフランス、イギリス、ロシアなどがドイツ封鎖を行っていました。

この作戦が実行されていたことにより、ドイツは物資を得ることができず、ドイツ経済は衰退していくことになります。

さらに、ベルサイユ条約(第一次世界大戦における講和条約)の締結により、ドイツは1,320億マルク(当時のドイツ通貨)もの賠償金を払わなくてはなりませんでした。しかし、この金額は敗戦国となったドイツの支払い能力を大きく超えていたため、すぐに賠償金を支払うことはできなかったのです。

これらの要因が重なり、ドイツは大量のマルクを刷り続けた結果、ハイパーインフレが起こりました。この影響でパンの値段は1兆マルクを超えてしまいました。紙幣の単位も桁違いになり、100兆マルク紙幣が発行されたほどです。

このように、敗戦とハイパーインフレによって、ドイツ経済は破綻することになったのです。

ロシア(ロシア帝国、旧ソ連)

1914年に開戦した第一次世界大戦で、莫大な戦費を消費したロシアでも戦後にハイパーインフレが起こりました。戦前に比べて、物価が170億倍まで上昇したのです。

また、ソ連崩壊後にもハイパーインフレが起こったことがあります。ソ連からロシアへの移行により経済は混乱し、1992年には物価が前年の20倍を超えてしまいました。その後、IMFの指導と融資があり、インフレは収束することになります。

アルゼンチン

アルゼンチンでは1988年にハイパーインフレが起こりました。政治の混乱やフォークランド紛争(大西洋のフォークランド諸島の領有を巡り、アルゼンチンとイギリスの間で起きた紛争)などの影響で経済が破綻してしまったのです。

1989年には物価が前年の50倍を超え、当時のアルゼンチン通貨であった「アウストラル」は紙くず同然になってしまいました。

ブラジル

ブラジルでは1986年から1994年までの間にハイパーインフレが起こりました。インフレがとてつもない勢いで進行し、物価が2兆倍を超えてしまったのです。

ブラジル政府は当時の通貨である「クルゼイロ」を「レアル」に切り替えてしまいました。この措置によりハイパーインフレは解消されましたが、クルゼイロを保有していた国民は資産を失ってしまったのです。

ジンバブエ

1980年の独立後、ジンバブエ政府は国内の白人農家を海外に追い出してしまいました。それほど白人による統治の反動は大きかったのです。たくさんの農家がいなくなった結果、農業が成り立たなくなり、徐々に物不足に陥ってしまったのです。

その影響で2000年よりインフレが加速し、2008年には物価が数百万倍になってしまいました。そして、その後も異次元の物価上昇は続き、ついには「100兆ジンバブエドル紙幣」が発行される事態になったのです。

ここまでくると当然、国家は破産しています。100兆ジンバブエドルも価値がなくなり、国民は資産を失ってしまったのです。

ハイパーインフレが起こった時の対策は?

ではハイパーインフレが起こったときの対策法にはどのようなものがあるでしょうか?

対策①:米ドル(外貨)を持つ

世界の基軸通貨は米ドルです。歴史を振り返っても、ハイパーインフレを起こした地域では自国通貨ではなく米ドルが使用されます。

日本円の価値が下がった時に、日本円しかもっていなかければ資産価値の暴落は免れません。しかし、もし米ドル(外貨)をもっていれば、リスクヘッジになります。日本円が暴落した後に米ドルを日本円に変えれば、生活資金を作ることも可能でしょう。

しかし、外貨を持つことは為替リスクを背負うことにもなります。外貨を持っている状態で円高になれば損失となるという事も考えておきましょう。

対策②:現物資産

金やダイヤや宝石など、世界で共通する価値がある資産をもっておくとハイパーインフレの対策となるでしょう。日本のお金に価値がなくなった時も、現物資産をもっていれば、世界のお金に変えることができます。

インフレがおきれば、全ての物価が上昇する事になりますが、実物資産は安定した価値を保持してくれます。何よりも金という物質は価値が世界的にあまり大きく変動せず、手元に所有できるという事も安心できることでしょう。

対策③:株式

インフレ対策としてよくあげられるのが株式です。インフレでお金の価値が下がった時に、企業がもっているものの価値は上がる事になります。企業が販売するものの価格が上昇することになるため、売上や利益は増加するでしょう。

しかし、、ハイパーインフレのように日本経済が破綻しかけている時には、株をもっていても企業が経営破綻する可能性もあります。株はインフレ対策には有効なのですが、ハイパーインフレの時には企業が本来持っている力にも左右されます。インフレの時に活用し、ハイパーインフレとなる前に外貨や現物資産をおさえておくのが良いかもしれません。

対策④:不動産

不動産も株式と同じようにインフレ対策になります。不動産は私たちが生活するうえで欠かせない資産です。ですから、価値がなくなることはありません。ハイパーインフレによって一時的に不動産価格の暴落はありますが、その後は資産価値が高まっていくでしょう。

また、不動産収入があれば物価上昇に見合って収入も高まります。

日本ハイパーインフレまとめ

日本のような先進国では、戦後のような極度のハイパーインフレが起こる可能性は低いと考えられます。ただし、日本の財政状況は先進国の中でも悪く、日本円の暴落を含めた金融危機の原因となる要因は様々なところにあります。

ハイパーインフレは現在でも世界の国で実際に起こっており、日本だけその可能性がないとは言えないでしょう。ハイパーインフレになる前に対策を打ち、資産を防衛することで家族や周囲の人を守ることもできます。

また日本はハイパーインフレだけでなく円の暴落や財政破綻など様々なリスクを抱えています。それは世界の先進国も同じですが、世界的な金融危機が起こる可能性は十分にあるのです。詳しくは以下の記事も参考にどうぞ。

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