日本財政

出口なしの異次元金融緩和!切り抜けるには?

政府・日銀は2013年から異次元金融緩和を導入しました。国債と日本株を大量に購入することで市場にお金を供給し、インフレ率2%を目指したのです。とはいっても実際には政府の財政危機を先延ばしにしているにすぎませんでした。

今の日本経済にとって最大のリスクは金融緩和の出口をどのようにするかです。これは簡単ではありません。これまでの金融緩和があまりにも大規模であったため、日本の金融市場も日銀の財務体質も大きく様変わりしてしまったからです。

これからの日本経済を考えるうえで金融緩和の出口を考えることは避けて通れないのです。

異次元金融緩和がもたらした日本経済の異常

日銀は異次元金融緩和がはじまる以前にも日本国債を大量に購入していましたが、その保有額は国債総額の1割程度に過ぎませんでした。ところが、異次元金融緩和で大量の国債が購入が行われたため、2018年9月には国際総発行残高の約5割を日銀が保有するという異常な事態が起こっています

通常、国債市場で形成される金利はその国の経済の実体を表しています。そのため、経済状況が過熱しすぎたり、逆に悪すぎると金利は上昇します。しかし、日本の国債市場は日銀が力を持ちすぎてすべてをコントロールしてしまったのです。

金利は本来、経済の体温とも言える重要な経済指標です。それが今や体温計が壊れてしまって体調がどうなっているかわからなくなっています。

日銀の存在が巨大化してしまったのは国債市場だけではありません。株式市場でも危険な状態が起こっています。日本の株式市場は日銀のETF購入によって支えられています。今や日本の大企業の大株主は日銀であり、株価が企業の実体を表していないのです

もう一つ問題なのは民間銀行が日銀に保有する当座預金です。これまでは民間銀行の当座預金には利子が付いていました。民間銀行はこれによって利子収入を得ていましたが、2016年のマイナス金利政策によって当座預金にマイナスの利子が付いたのです。そのため、民間銀行の収益が悪化し、低金利と相まって財務状態の危機的な銀行まで出てきました。

このような変化はあまりにも大きいため、金融緩和は元に戻すことはおろか、止めることすら極めて困難な状況です

金融緩和の出口で日銀と政府は財政危機に陥る

日本の金利は金融緩和によってすでに実体経済と合わない状態になってしまいました。ところが、金融緩和政策をやめると金利は自然の姿に戻ります。しかも、世界的に金利が上昇している今、金融緩和をやめれば日本でも金利は上昇する可能性が高いです。

金利が上昇すると今まで顕在化していなかった様々な問題が発生します。特に深刻な問題は3つあります。

  • 日銀が債務超過に陥る
  • 政府が財政危機に陥る
  • コントロール不能のインフレが起こる

日銀が債務超過に陥る

金利が上昇すると日銀が保有している国債に巨額の損失が発生します。その額は金利が1%上昇すると23兆円程度になると分析されています。アメリカの長期金利は2018年9月で3%ちかくになっていますが、日本でも3%まで上がるのは十分に考えられます。その場合、日銀の損失額は69兆円という信じられない額になります。

日銀は政府の子会社ではありますが、一応独立した企業です。その一企業が日本の歴史上最大赤字額2兆3771億円(2003年みずほフィナンシャルグループ)をはるかに超える損失を出すのです。

また、日銀はこれまで日本国債を額面より高い価格で購入してきました。その結果、保有国債の償還時にも10兆円の損失が発生すると予想されています。このような巨額の損失が現実化すれば日銀の債務超過という前代未聞の事態が生じる可能性もあります

これまでどこの国でも中央銀行が債務超過に落ち込んだことはありませんでした。そのため、もし日銀が債務超過に陥った場合はどのような対策を取ればよいのかはまったく見当が付きません。

よく「日銀はお金を刷る特権があるのだから債務超過には陥らない。」という人もいますが、そうした対策を信じて本当に良いのでしょうか?もし、日銀の債務超過について日銀券の発行をすることで解決しようとするなら、世界各国の金融機関から日銀券(日本円)の信用は著しく落ちてしまうでしょう。

そのようなことが許されるのであれば消費税増税も所得税もすべての税金は上げる必要がなくなります。お金を刷れば良いだけの話なのですから。こんなことを世界各国の中央銀行が行ったら経済はどうなるのでしょうか?

政府が財政危機に陥る

また、金利が上がると政府の債務の利払い費も上昇します。財務省は金利が1%上昇すると利払い費などを含めた国債費が3.6兆円増え、2%上昇すると7.3兆円増えとの試算をまとめました。

現在は金融緩和によって日銀が金利上昇を抑えていますが、金融緩和の出口で金利が上昇すると政府債務は膨大な勢いで増えていきます。さらに政府債務が危機的な状況になると金利は必ず上昇します。財政破綻の危機にある国の国債を低金利で買いたい人はいませんから、金利を上げるしかありません。

そして「金利が上がると債務が増える⇒国債を買う人が減る⇒金利が上がる」という負のスパイラルに陥るのです。

つまり金利が一度上昇をはじめると政府債務は増え続けて歯止めが効かなくなります。金利上昇がはじまると日本は財政危機へと近づいていくことになります。

コントロール不能のインフレが起こる

そして、日本円の信用が落ちると円安が起こります。円安とは円が売られて円の価値が下がるということです。経済危機が起こるような国の通貨を欲しがる人はいませんから日銀が危機的な状況になると円安になるのです

すると食品や資源を海外から輸入している日本企業は、輸入商品価格の高騰によって物価を上げざるを得ません。その結果インフレが起こります。このようにインフレが起こると資産を多く持った人々は貯金を引き出して株式や不動産、金などの現物資産を購入します。

インフレとは物の価格が上がり、円の価値が下がることですので資産を株や現物に変えることで資産防衛を行うのです。その結果、市場の貨幣供給量は上がって物価はさらに上昇します。

一度インフレが加速すると現在の日本では止めることができません。伝統的な金融政策ではインフレに対して金利を上げることで抑えてきましたが、先ほど紹介したように日本にはすでに金利を上げる手段がないのです。

日銀は金融緩和の出口戦略がないことを知っている

金融緩和の出口で起こる危機について日銀は「金融緩和政策の出口を議論するのは時期尚早」と言い続けてきました。そして、アメリカが金融緩和を停止して政策金利の引き上げを行っているのとは逆に、マイナス金利の導入や長期金利の操作にのめり込んでいったのです。

それは日銀が金融緩和終了について触れた時点で海外のヘッジファンドなどが国債の空売りを仕掛け、金利上昇をねらってくるからです。これまでも日銀の金融政策決定会合では海外のヘッジファンドから巨額の国債空売りを仕掛けられています。

今のところ空売りのたびに日銀が国債を買い入れて金利上昇を免れていますが、このような状況をいつまでも続けるわけにはいきません。日銀が金利を全てコントロールしようとするのは長期的にみると無理があり、危機を先延ばしにしているだけです。

日銀はすでに金利を人為的にコントロールしすぎてしまいました。このような状況で金融緩和という金利コントロール政策をやめると、実体経済にそって金利は必ず上昇します。その時に起こる日銀の債務超過危機や政府の財政危機を日銀がわからないはずはありません。

実際に出口のない異次元金融緩和の危険性を訴えているのは日銀のOBたちなのです。

日銀が異次元金融緩和からスムーズに切り抜けるには?

では日銀がこのような異次元緩和からスムーズに切り抜ける方法はあるのでしょうか?

経済学者の多くは「市場との対話を重ねることで少しずつ金融緩和を終わらせる必要がある」とコメントしています。つまり、市場を刺激して金利が上がらないようにゆっくりと金融緩和から離れていくべきとしています。これは市場に対して金融緩和をやめても金利の高騰や国債価格の暴落は起こらないと説明し、実際にその通りに動くことで安心感を持ってもらうということです。

しかし、これらの発言は金融緩和からのまともな出口がないと言っているようなものです。結局は市場の動向に任せるしかなく、市場に任せた時点で金利は上がる可能性が高くなります。海外のヘッジファンドも黙ってはおかないでしょう。

金融緩和の出口に対しては様々な経済学者が議論していますが、今だに納得できる明るい未来を提示する学者はいません。金融緩和の出口で起こる金融危機について私たちはひとり一人が対策を行う必要があります。

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